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21g小話:臆病な狂気

2年くらい前の太鼓と上手の話。
ちなみにこの2人は同じ大学に通ってました。

 学食で合流した彼の頬には、見事な紅葉が咲いていた。私の視線に気付いたのか、彼は眉を下げて笑う。
「どしたの、みっちゃん」
「振られてまって」
 苦笑気味に言うが、彼は幼馴染よりは真っ当な付き合いをしていたはずだ。少なくとも、頬を叩かれるならあの阿呆のが先だろう。
  それに。
  彼が付き合っていたのはそんなことをしそうにない、大人しそうな女の子だった筈なのだが。
 「三限の前に呼び出されてさ、ばしっと」
「……理由は」
「『なんで大事にしてくれないの』」
  ……相当酷い顔をしたのだろう、みっちゃんが吹き出す。
  随分身勝手な理由だと、思ったままに呟けば――彼は目を細めて。
 「『そんなの人形と変わらないじゃない』」
 「……可愛いって言って、大事にすることが?」
 「俺(わ)の、愛し方が」
  くすくす、みっちゃんは喉で笑う。細めた目の色は、夜みたいに昏い。
 「……おっがねぇはんでなぁ」
 喧噪の向こうから、地元の訛りを含んだ声が言う。見上げた視線の意味を悟って、友人は更に笑った。
 「生身の人間は、おっがない」
 「……まぁ」
「壊れやすくてまいから」
  くすくす、くすくす。
  隣を歩く友人が笑う。
  高校時代の笑い方で。
  今にも泣きそうな顔で。
 「俺のは、まいねはんで……猫かわいがりのが、丁度いんだばっでなぁ」
 「……そう?」
 「んー……俺のはさ、ヤマさん」
 「うん」
「どっちかったら」
「うん」

  ――執着だよ。

「したばってまいつーんだば、しょうがねっきゃ」
「……分かんなかったんだよ、みっちゃん」
 「んだな、『普通』の子だったはんで」
 「でも、そんな子がいいんだべ?」
  意地の悪い問いだと、我ながら思った。けれども彼は、今度は『いつも』の顔で。
 「……仕方ねっきゃ」
 そう言って、笑って見せた。

 ++++++++++++++++++++++
殴り書き。 蜜は双子には内面さらけ出しそうな気がする。
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