メモ帳
創作バンド中心に、作品未満のネタ置き場。落書きだったり文だったり。
テロまとめ。そのに。
Twitterでやらかした140文字テロのログそのに。
【初めて音に触れた日のこと】【それでも歌い続けると決めた】は
「【オリ盤】でお題しようぜ」様からお借りしました。
+++++++++++++++++++++++++++++++
「あの子は一回覚えた歌詞を忘れません」
特技を訊ねると彼女はそう答えた。
「公式は碌に覚えられなかったんですけどね」
吐息に近い笑いを零して、でも、と続ける。
「澪にとってそれは特技でもなんでもなくて、当たり前のことなんです」
その笑顔が、何よりも雄弁に彼を誇っていた。
<Amadeus>
+++++++++++++++++++++++++++++++
「まいね」
「駄目」
「わった」
「とても」
「かちゃまし?」
「えっと、ごちゃごちゃした」
「あづまし」
「……落ち着いた?くらいのニュアンスですね」
あかん、分からん。そう言って弑さんは天を仰いだ。
関西弁も似たような物だとは思ったけど。
「したらまた通訳しますよ」
「おおきに、ソーセイ」
<異言語コミュニケーション>
+++++++++++++++++++++++++++++++
歌うことは好き。
歌うことが好き。
それこそ、失ったら死んでしまうくらいに。
ならそれは生きる為、なんだろうか。
「んー……」
考えても答えは出ない。
ただきっと、その場所が無くなったら酷く苦しいのだろう。
「そうかもなぁ」
……でも、声があるならきっと、まだ。
<Eat to live? Live to eat?>
+++++++++++++++++++++++++++++++
「才能なんてないですよ」
それを素直に口に出せたのは、きっと相手がもう「バンド」をやっていないから。
「知ってます、ちゃんと」
けど、俺は――それを覆す程の努力を知っている。
俺より後に楽器を始めて、俺を抜いた細い指。
「でもそれは弾かない理由にはなりません、社長」
<凡人の宣戦布告>
+++++++++++++++++++++++++++++++
初めて音に触れた日のことは今でも覚えている。
一番上の姉が買ってきたそれは、小学生の俺にはやけに大きく見えた。
爪弾いた四つの弦から、響いたのは体を震わす低音。
「ねぇ、凛、それなぁに」
振り返った目はいつもと同じように平坦なまま
「……ベース」
黒を譲り受けるまで、それは彼女の音だった。
【初めて音に触れた日のこと】
+++++++++++++++++++++++++++++++
俺と同じような人は地元には居なかった。
でも、東京には。
そんな想いで上京すれば、自分の才能の無さを知った。
綺麗な音も、技術も、これっぽっちも無いけど。
「ねぇちゃん、これ、新しい曲?」
「そう」
そうじゃなきゃ死んでしまう俺の為に、皆が音をくれるから。
だから、それでも歌い続けると決めた。
【それでも歌い続けると決めた】
+++++++++++++++++++++++++++++++
おんなのこじゃなきゃよかった。
震えた声と、付け過ぎた澪の香水。
月に一度、この馬鹿は酷く沈み込む。
「オメーみたいな鶏がらに欲情しねぇけどな」
膝に沈んだ頭を軽く叩く。あくまでいつも通りに。
「唯に言われたくない」
「オメーよりマシ」
これいらない。腹に手を当てた呟きは聞こえないことにした。
<月桂樹>
+++++++++++++++++++++++++++++++
結構な勢いで背中に飛び込んできたのは澪で、外では珍しいとぼんやり思う。
「どうしたー」
「……またなんか、言っちゃいけないこと、言ったみたい」
俺、馬鹿だから。口癖のように呟くそれに、溜息を飲み込む。
でも、とくぐもった声は背中から。
「……言っちゃ駄目だって、思わなかったの」
<「歌えなくなったら死んじゃうよ」>
+++++++++++++++++++++++++++++++
蝉の声が嫌い。強い日差しが嫌い。
線香の匂いのするこの時期が嫌い。
「……八月なんか溶けちゃえばいい」
「まず自分の頭が溶けとるやん、澪」
「うー」
耳を塞いでも蝉の声が聞こえる。
影の濃いこの時期は、嫌なことばかり思い出すから。
「嫌い」
<萩月の唄歌い>
+++++++++++++++++++++++++++++++
弑の相方。
そう称せば、年下の幼馴染はぎこちなく笑った。
「今までの人に比べたら、全然、たんないけど」
小さく落とした一言。それを聞いて、相変わらず馬鹿だと思った。
幾つもあるバンドから、彼は21gを選んだ訳で。
「馬鹿ね、怜」
彼の相方はアンタで――そんなこと、気にしても仕方ないのにね。
【気にしても仕方ないのにね。】
+++++++++++++++++++++++++++++++
「ねぇ、ヤマさん」
首を押さえ込んだ掌と、降ってくる笑い声。
「そんなに死にたいなら死ねばいいのに」
ねぇ、ヤマさん。散らばった薬のシートと汚れた包帯。
それに怒っていることは、なんとなく分かる。
「……死にたくはない、よ」
今は。
回らない舌でそう返せば、子供みたいな声が「嘘吐き」と笑った。
<死にたがり>
+++++++++++++++++++++++++++++++
左手首、は、この界隈でそう珍しくもない。
夏でも長袖を着る理由。けど、それで済ませられない。
「ぃ、さん」
ごめんなさい、と掠れた声。
「……ええから寝とけ、なぁ、ソーセイ」
早く薬が溶ければいい。
そんな事を考える、この時間は窒息しそうだ。
<夜明け前>
【初めて音に触れた日のこと】【それでも歌い続けると決めた】は
「【オリ盤】でお題しようぜ」様からお借りしました。
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「あの子は一回覚えた歌詞を忘れません」
特技を訊ねると彼女はそう答えた。
「公式は碌に覚えられなかったんですけどね」
吐息に近い笑いを零して、でも、と続ける。
「澪にとってそれは特技でもなんでもなくて、当たり前のことなんです」
その笑顔が、何よりも雄弁に彼を誇っていた。
<Amadeus>
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「まいね」
「駄目」
「わった」
「とても」
「かちゃまし?」
「えっと、ごちゃごちゃした」
「あづまし」
「……落ち着いた?くらいのニュアンスですね」
あかん、分からん。そう言って弑さんは天を仰いだ。
関西弁も似たような物だとは思ったけど。
「したらまた通訳しますよ」
「おおきに、ソーセイ」
<異言語コミュニケーション>
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歌うことは好き。
歌うことが好き。
それこそ、失ったら死んでしまうくらいに。
ならそれは生きる為、なんだろうか。
「んー……」
考えても答えは出ない。
ただきっと、その場所が無くなったら酷く苦しいのだろう。
「そうかもなぁ」
……でも、声があるならきっと、まだ。
<Eat to live? Live to eat?>
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「才能なんてないですよ」
それを素直に口に出せたのは、きっと相手がもう「バンド」をやっていないから。
「知ってます、ちゃんと」
けど、俺は――それを覆す程の努力を知っている。
俺より後に楽器を始めて、俺を抜いた細い指。
「でもそれは弾かない理由にはなりません、社長」
<凡人の宣戦布告>
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初めて音に触れた日のことは今でも覚えている。
一番上の姉が買ってきたそれは、小学生の俺にはやけに大きく見えた。
爪弾いた四つの弦から、響いたのは体を震わす低音。
「ねぇ、凛、それなぁに」
振り返った目はいつもと同じように平坦なまま
「……ベース」
黒を譲り受けるまで、それは彼女の音だった。
【初めて音に触れた日のこと】
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俺と同じような人は地元には居なかった。
でも、東京には。
そんな想いで上京すれば、自分の才能の無さを知った。
綺麗な音も、技術も、これっぽっちも無いけど。
「ねぇちゃん、これ、新しい曲?」
「そう」
そうじゃなきゃ死んでしまう俺の為に、皆が音をくれるから。
だから、それでも歌い続けると決めた。
【それでも歌い続けると決めた】
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おんなのこじゃなきゃよかった。
震えた声と、付け過ぎた澪の香水。
月に一度、この馬鹿は酷く沈み込む。
「オメーみたいな鶏がらに欲情しねぇけどな」
膝に沈んだ頭を軽く叩く。あくまでいつも通りに。
「唯に言われたくない」
「オメーよりマシ」
これいらない。腹に手を当てた呟きは聞こえないことにした。
<月桂樹>
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結構な勢いで背中に飛び込んできたのは澪で、外では珍しいとぼんやり思う。
「どうしたー」
「……またなんか、言っちゃいけないこと、言ったみたい」
俺、馬鹿だから。口癖のように呟くそれに、溜息を飲み込む。
でも、とくぐもった声は背中から。
「……言っちゃ駄目だって、思わなかったの」
<「歌えなくなったら死んじゃうよ」>
+++++++++++++++++++++++++++++++
蝉の声が嫌い。強い日差しが嫌い。
線香の匂いのするこの時期が嫌い。
「……八月なんか溶けちゃえばいい」
「まず自分の頭が溶けとるやん、澪」
「うー」
耳を塞いでも蝉の声が聞こえる。
影の濃いこの時期は、嫌なことばかり思い出すから。
「嫌い」
<萩月の唄歌い>
+++++++++++++++++++++++++++++++
弑の相方。
そう称せば、年下の幼馴染はぎこちなく笑った。
「今までの人に比べたら、全然、たんないけど」
小さく落とした一言。それを聞いて、相変わらず馬鹿だと思った。
幾つもあるバンドから、彼は21gを選んだ訳で。
「馬鹿ね、怜」
彼の相方はアンタで――そんなこと、気にしても仕方ないのにね。
【気にしても仕方ないのにね。】
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「ねぇ、ヤマさん」
首を押さえ込んだ掌と、降ってくる笑い声。
「そんなに死にたいなら死ねばいいのに」
ねぇ、ヤマさん。散らばった薬のシートと汚れた包帯。
それに怒っていることは、なんとなく分かる。
「……死にたくはない、よ」
今は。
回らない舌でそう返せば、子供みたいな声が「嘘吐き」と笑った。
<死にたがり>
+++++++++++++++++++++++++++++++
左手首、は、この界隈でそう珍しくもない。
夏でも長袖を着る理由。けど、それで済ませられない。
「ぃ、さん」
ごめんなさい、と掠れた声。
「……ええから寝とけ、なぁ、ソーセイ」
早く薬が溶ければいい。
そんな事を考える、この時間は窒息しそうだ。
<夜明け前>
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