メモ帳
創作バンド中心に、作品未満のネタ置き場。落書きだったり文だったり。
21g小話:仕方がないって諦めるのやめない?
一日一つお題きめったー 【http://shindanmaker.com/134159】にて
リズム隊にお題
『仕方がないって諦めるのやめない?』or『実況が卑猥だ 』【不良】
が出て夜中に一人滾りました。どうもカナイです。
続きに津島君と佐藤君の小話。
リズム隊にお題
『仕方がないって諦めるのやめない?』or『実況が卑猥だ 』【不良】
が出て夜中に一人滾りました。どうもカナイです。
続きに津島君と佐藤君の小話。
「仕方ないっきゃ」
そう言って笑うみっちゃんは、俺よりずっと大人なんだと思う。
それは大概俺が何かに腹を立てた時で、そんな俺を諌める時に、決まってみっちゃんはそう言う。
静かな言葉は、本当に同じ十六歳なのか疑いたくなるほどだ。
けど、それは。
「……みっちゃん、さぁ」
「なぁに、イチ君」
「そうやって、仕方ないって諦めるのやめない?」
高いところで、ぱちくり瞬く双眸。聡いみっちゃんにとって、珍しい動作。
嘲笑や陰口なんかを耳にした時、決まってみっちゃんは笑う。そうして、色んな悪意を受け流す、けど。
その下がった眉は、到底納得しきっているようには思えない。
「……ホントは、仕方ないって思ってねーだろ」
見上げた先で、みっちゃんはまた眉をハの字にする。
困ったような、そんな笑い方。
いつもとは少し違う形で、そのことに少し安心した。言ったのは俺なのに、勝手だとは思うけど。
『仕方ないっきゃ』
困ったような、諦めたような、そんな笑い方すら――いつか、浮かばなくなりそうで。
「……イチ君、一番下だっけ」
「え?」
「シロと同じ事言うなあ、って」
少しだけ形の変わった笑い方で、ぽつりとみっちゃんは言う。
ざわり、心臓がざわつく、そんな形で。
傾いた陽の光を背に、影の落ちた――そんな笑顔。
「……何、言いたいの」
「んーん、何でもねぇよ」
「何でもない訳無ェだろ」
仕方ない。
そんな顔で笑われる位なら。
「言わないと、伝わんねぇよ」
「……うん」
「……だから、ンな顔するくらいなら、言えってば」
「……んだね、イチ君」
「だから」
「――皆そうやって聞いてくれる訳じゃねぇはんで」
眉をハの字にした、困ったような笑い方。
静かに言われた一言に、それが嫌だった理由を悟る。
分かる筈がないと、突き放すそれ。
『だってれーちはふつうだから』
「どうせ言っても、意味無ェよ?」
……だから、そうやって笑うって言うの。
喉元まで出掛かったそれは、みっちゃんに比べたら子供じみている気がした。
それに、それを投げたい相手はみっちゃんじゃない。
「ねー、みっちゃん」
「なぁに、イチ君」
「俺とみっちゃんって友達だよね」
「だと、俺(わ)は思ってるばって」
「だったらさぁ」
机に頬杖を付いて見上げた長身。
「俺、友達のそんな顔見たくないんだ、って言ったらやめてくれる?」
さっきよりも長く、その目が瞬きを繰り返す。
きょとんとしたそれが、くしゃりと、子供みたいな笑顔に変わる。
「イチ君は、ずるいねぇ」
「今知った?」
「ううん、前から知ってたけど」
笑いながら、ずるい、とみっちゃんは言う。
こてんと窓ガラスに頭を預けて、イチ君、と呼ばれる名前。
「そんなこと言うと、俺調子さ乗るよ」
「乗ればいいのに」
「……うん」
「そうやって黙るんだったら、折角喋れる意味無ぇべさ」
「……うん」
ねぇイチ君。
そう言って、細めた目がこちらを見る。逆光の所為か、酷く暗いそれ。
「言ってもいいの」
「……だから、言えつってんだろ」
……みっちゃんは頭良いのに、たまに鈍い。まぁそういうトコもみっちゃんらしいけど。
実は噛み合ってなかった会話に溜息を吐けば、机を挟んだ向こう側でみっちゃんが笑う。
「イチ君」
「んだよ、みっちゃん」
「イチ君はホント、ずるいねぇ」
どうしてそれを嬉しそうに言うのか、俺には分からなかった。
けれども浮かんだ笑顔が、さっきよりはずっとマシなものだったから。
「今更だよ」
そう言って、笑うことにした。
<仕方がないって諦めるのやめない?>
「そうやってまた赦してくれるんだね」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
諦めることを覚えた人と、諦めなくてもよかった人。
ひとつひとつ、増えたのは
そう言って笑うみっちゃんは、俺よりずっと大人なんだと思う。
それは大概俺が何かに腹を立てた時で、そんな俺を諌める時に、決まってみっちゃんはそう言う。
静かな言葉は、本当に同じ十六歳なのか疑いたくなるほどだ。
けど、それは。
「……みっちゃん、さぁ」
「なぁに、イチ君」
「そうやって、仕方ないって諦めるのやめない?」
高いところで、ぱちくり瞬く双眸。聡いみっちゃんにとって、珍しい動作。
嘲笑や陰口なんかを耳にした時、決まってみっちゃんは笑う。そうして、色んな悪意を受け流す、けど。
その下がった眉は、到底納得しきっているようには思えない。
「……ホントは、仕方ないって思ってねーだろ」
見上げた先で、みっちゃんはまた眉をハの字にする。
困ったような、そんな笑い方。
いつもとは少し違う形で、そのことに少し安心した。言ったのは俺なのに、勝手だとは思うけど。
『仕方ないっきゃ』
困ったような、諦めたような、そんな笑い方すら――いつか、浮かばなくなりそうで。
「……イチ君、一番下だっけ」
「え?」
「シロと同じ事言うなあ、って」
少しだけ形の変わった笑い方で、ぽつりとみっちゃんは言う。
ざわり、心臓がざわつく、そんな形で。
傾いた陽の光を背に、影の落ちた――そんな笑顔。
「……何、言いたいの」
「んーん、何でもねぇよ」
「何でもない訳無ェだろ」
仕方ない。
そんな顔で笑われる位なら。
「言わないと、伝わんねぇよ」
「……うん」
「……だから、ンな顔するくらいなら、言えってば」
「……んだね、イチ君」
「だから」
「――皆そうやって聞いてくれる訳じゃねぇはんで」
眉をハの字にした、困ったような笑い方。
静かに言われた一言に、それが嫌だった理由を悟る。
分かる筈がないと、突き放すそれ。
『だってれーちはふつうだから』
「どうせ言っても、意味無ェよ?」
……だから、そうやって笑うって言うの。
喉元まで出掛かったそれは、みっちゃんに比べたら子供じみている気がした。
それに、それを投げたい相手はみっちゃんじゃない。
「ねー、みっちゃん」
「なぁに、イチ君」
「俺とみっちゃんって友達だよね」
「だと、俺(わ)は思ってるばって」
「だったらさぁ」
机に頬杖を付いて見上げた長身。
「俺、友達のそんな顔見たくないんだ、って言ったらやめてくれる?」
さっきよりも長く、その目が瞬きを繰り返す。
きょとんとしたそれが、くしゃりと、子供みたいな笑顔に変わる。
「イチ君は、ずるいねぇ」
「今知った?」
「ううん、前から知ってたけど」
笑いながら、ずるい、とみっちゃんは言う。
こてんと窓ガラスに頭を預けて、イチ君、と呼ばれる名前。
「そんなこと言うと、俺調子さ乗るよ」
「乗ればいいのに」
「……うん」
「そうやって黙るんだったら、折角喋れる意味無ぇべさ」
「……うん」
ねぇイチ君。
そう言って、細めた目がこちらを見る。逆光の所為か、酷く暗いそれ。
「言ってもいいの」
「……だから、言えつってんだろ」
……みっちゃんは頭良いのに、たまに鈍い。まぁそういうトコもみっちゃんらしいけど。
実は噛み合ってなかった会話に溜息を吐けば、机を挟んだ向こう側でみっちゃんが笑う。
「イチ君」
「んだよ、みっちゃん」
「イチ君はホント、ずるいねぇ」
どうしてそれを嬉しそうに言うのか、俺には分からなかった。
けれども浮かんだ笑顔が、さっきよりはずっとマシなものだったから。
「今更だよ」
そう言って、笑うことにした。
<仕方がないって諦めるのやめない?>
「そうやってまた赦してくれるんだね」
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諦めることを覚えた人と、諦めなくてもよかった人。
ひとつひとつ、増えたのは
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