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21g小話:切れるものなら切ってしまいたい(縁も血筋も未練も全て、全て)

一日一つお題きめったー 【http://shindanmaker.com/134159】にて澪に
お題『切れるものなら切ってしまいたい(縁も血筋も未練も全て、全て)』or『世界は緩やかに廻る 』【男装】
が出ました。
……ホントどうしたのこの診断メーカー。


続きに少し薄暗い話。


 何か言い掛けた声を無視して通話を終える。ついでに携帯の電源を落として適当に放れば、壁に当たって鈍い音を立てた。
 喉から零れた溜息は堪らなく苦い。
 気紛れを起こして出なければ良かった。そんな後悔ばかりが頭の中をぐるぐるする。
 一人で居ると気分が沈むのは分かり切っていたから、携帯はそのままに部屋を出る。
 リビングと、間続きのキッチン。カウンターの向こうで、黒が揺れる。遠目にも細い、背中。
 ――それをまた、暗がりに閉じこめようとでも言うのか、アイツ等は。
 まな板の上で何かを切るねぇちゃんの、その肩に額を押し付ける。
 一瞬強張って、それから届く「澪?」の声。
「危ないんだけど」
「……ごめん」
「邪魔だから後に」
「ねぇちゃん」
 いつもの調子の声。
 それに安堵すると同時に、堪らなく怖くなる。
「……お見合い、すんの」
「……誰から聞いたの」
「……律」
 年の離れた弟は、嗤いながらそう言った。それが、本家が持ってきた話だとも。
 腰に回した手に力を込めれば、肩の動きで溜息を吐いたのが分かる。
「相ッ変わらず……断るよ。帰ってる暇ないもん」
「……ホント?」
「嘘ついてどうすんのよ。そもそも結婚とか考えられないし」
「……本家が」
「それまで言ったの? ……まぁ、本家は本家なりに考えてるみたいよ、色々」
 苦笑気味の声。
 ……笑えるということは、忘れたってことなのに。
 本家も、弟も、まだねぇちゃんに。
「いかないから安心しなさい」
「うん……縁、切れたらいいのに」
 実家にもう帰る気はないし、本家に関しては考えたくもない。
 世間一般に貴ぶべきだといわれるものなんていらない。
 俺に、要るのは。
「……ねぇちゃんだけでいい」
 呟けば、ねぇちゃんはもう一度溜息を吐く。
 ことりと包丁を置いて、握っていた手を俺の掌に重ねて。
「そんなこと言わないの」
「……だって、ねぇちゃんだけでいいもん」
 ――俺の、家族は。
 浮かんだソレはねぇちゃんにのしかかるだろうから、どうにか飲み込む。
 代わりに落とした「いかないでね」に、笑うねぇちゃん。
 ……つながるのは、本当に、この細い体だけでいい。
 鎖みたいな血も、おぞましい未練も、全部全部関係ないものに出来たらいい。
 祈るみたいに力を込めれば、ねぇちゃんはまた溜息を吐いた。
 
<切れるものなら切ってしまいたい>

(縁も血筋も未練も全て、全て)
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